剣道は前に打ち込んでいく「前技」だけでなく、下がりながら打突する「引き技」があります。
試合の半分、もしくは半分以上が「鍔迫り合い」という接近戦になります。
「前技」だけでなく「引き技」を攻略する事で、試合を有利に運ぶことができます。
引き技には大きく分けて以下の3種類あります。
- 引き面
- 引き小手
- 引き胴
今回3種類の中の「引き面」について解説していきます。
自分が覚えている限りで、高校の時に打った引き面で1本の動画があれば、載せておきます。
Contents
引き面の打ち方・引き面の種類【初級編】
引き面の打ち方の種類について説明していきます。
特にフェイント等を使わずに、技を出すことで1本にします。
この時に「起こり」や「打ち気」が見えてしまうと相手にバレてしまう為、避けられたり、体を寄せられたりして、一本になりにくくなります。
まず、初級編の5種類の変化無しの引き面を紹介します。
- 表から引き面
- 裏から引き面
- 別れ際の引き面(裏から)
- 別れ際の引き面(表から)
- 相引き面
1.表(おもて)から引き面
「表」から引き面は、自分から見て「右側」を打突します。
鍔迫り合いの時に、自分から見て「左側」に竹刀を構えていると、「右側」に竹刀を振る時に相手にバレてしまいます。
準備の時点で、「表側(右側)」に竹刀を持っていきましょう。
打突する時に狙うポイントは、面金(めんがね)や面金の縁に当たらないように注意することです。
面金や面縁に当たってしまうと、音が「カシャン!」「ガシャン!」と鳴ってしまうので、1本になりにくくなります。
面布団をしっかり捉え「ポコッ」と鳴るようにしましょう。
足の使い方ですが、基本的には右足が前、左足が後ろの状態で鍔迫り合いして構えておきます。
「起こり」を見せないために、止まった状態から打たないようにしましょう。
足を使いながら、相手との間を盗んで引き面を打ちましょう。
相手の反応スピードが速く、体を寄せてくる選手には、左足を一瞬前に出して打つことで「間合い」を作る方法もあります。
これは、体が斜めになってしまい1本になりにくくなるので、打った瞬間に体を相手に正対するように努力しましょう。
打突力と踏み込みの力はどの引き面でも強ければ強いほど1本になりやすいので練習してみてください。
2.裏から引き面
裏から引き面は、自分から相手を見て「左側」の面を狙って打ちます。
基本的に、表から引き面と同じ状態で構えます。
そこから何もせずに裏から引き面を打つと、右から左に竹刀を振る時に相手にバレてしまう可能性があります。
なので、表の引き面を相手に意識させて、自分から見て右側を避けるように組み立てます。
十分に意識させた所で、裏面「相手の左側」を瞬間的に狙っていきます。
反応スピードが速い選手だと避けられてしまう可能性があるので、体を一瞬右側にフェイントして打ったり、一瞬右面「表面」を当ててから裏面を打突するなど工夫してみましょう。
以下の動画の3分15秒辺りから、裏の引き面を打っています。
3.別れ際の引き面(表から)
別れ際の引き面は、鍔迫り合いからお互いに別れようとする瞬間を狙います。
相手が常に警戒している場合は避けられてしまうので、打ち気を消して打突します。
高校生ルールだと、別れる際に竹刀が肩から離れて打つと、反則になってしまうので注意しましょう。
離れるか離れないかギリギリの「グレーゾーン」を狙うか、一度打突することで中間の間
を作って、別れ際に打つかの2択です。
この技は、竹刀が立っている状態の鍔迫り合いと違って、構えた状態から打つ様になるので、打突力の強化「パワー」や「踏み込みの強さ」が重要になります。
以下の試合動画の5分34秒から山田選手が表からの引き面を打ちます。
出典:Youtube ★2014玉竜旗 一本集 Gyokuryuki High school KENDO

4.別れ際の引き面(裏から)
別れ際の引き面(裏から)と同様に鍔迫り合いから別れる瞬間を狙っていきます。
表から打つ場合、基本的に、前技と同様に竹刀を振って打ちますが、裏から場合は2種類あると思います。
- 1つ目は、表からと同様に竹刀を振って打つ方法です。
- 2つ目は、自分から見て相手の右側を弾いて、「瞬間的なキレ」と「踏み込みの強さ」で1本にする方法です。
2つ目は相手に気付かれずに速く打つことは可能ですが、スピード任せに打ってしまうと、審判に打っている様に見えなくなります。
面を触っているだけに見えてしまうので、「キレ」「踏み込み」「下がるスピード」「声」「タイミング」全ての要素が噛み合った時に1本になります。
以下の動画の4分30秒から宮本選手が打ちます。(1つ目のパターン)
出典:Youtube 【H29第63回関東学生剣道選手権大会】一本集
5.相引き面
相引き面は、前技の「相面」と同じです。
「相手が引き面を狙っているな。」と感じた時に、相手より先に「引き面」を出します。
この時に相手が引き面を打ち始めてから、自分も合わせると負けてしまいます。
これは前技の「相面」も同様です。
相引き面はスピード勝負なので、竹刀を振って打とうとしないでください、
鍔迫り合いの状態から、そのまま竹刀を振り下ろして、踏み込みの力を使って下がります。
こちらの試合の2分7秒で相引き面を打っています。
引き面の打ち方・引き面の種類【中級編】
引き技の中級編では、相手の体勢を崩してから打突する技や、フェイントをしての技をメインに紹介していきます。
難易度は高くなりますが、相手を惑わせたり、動揺させる事で1本にしやすくなります。
しかし、フェイントは自分の隙にもなるので注意して使いましょう。
相手に打たれないように練習もして試合で使ってみてください。
【中級編】では以下の5種類について解説しています。
- 押して引き面
- 崩して引き面
- 引き胴、フェイント引き面
- 面フェイント裏から引き面
- 裏から別れ際に、表に抜いて引き面
6.押して引き面
押して引き面は、鍔迫り合いから相手の体を押してから面を打突して下がる技です。
軽く押しても、相手は驚きません。
押す部分は相手の竹刀越しに、溝落ちを押します。
押してから、振りかぶってしまうとせっかく作った一瞬の隙を捉えることができません。
押した状態からそのまま竹刀を振り下ろしましょう。
その時に、左手を少し強めに押すことで、押すと同時に竹刀を振りかぶることができるので練習してみてください。
押す時に、体が離れていると力が入りにくいので、手を縮める事で相手との距離を近くしてから押すと効果的です。
この動画の始まって1分辺りに押して引き面を打っています。
出典:Youtube 九州学院 前人未到の三連覇 インターハイ剣道2015
7.崩して引き面
崩して引き面は、鍔迫り合いの状態から相手の首元を竹刀で「左斜め下」に押します。
そうする事で、相手の体勢が崩れて打突するチャンスが生まれます。
竹刀の先端で崩す程、力が伝わりません。
出来るだけ根元の方から拳で崩す事で効果的に体勢を崩すことができます。
「左斜め下」に押す理由として、竹刀を横に振ってしまうと上半身のみしか崩れないので、体勢が戻りやすくなります。
体全体を崩すイメージをしましょう。
また、「体幹が強い選手」や「重心を落として踏ん張る選手」には崩して引き面は有効ではありません。
その時は、相手の重心を移動させるために、足を使って体勢を崩してから、竹刀で崩す2段崩しにチャレンジしてみましょう。
以下の動画の始まって50秒辺りで、星子啓太選手が1本にしています。
8.引き胴、フェイント引き面
引き胴見せて引き面(引き胴のフェイントをして引き面)は相手の意識を一瞬だけ胴に意識させることで竹刀を下げます。
その瞬間に面を捉えて、下がります。
意識させる為には、あらかじめ引き胴を1本にするなど相手に「1本の恐怖を与える」事でフェイントが強みになります。
なので、胴を打つ動作とフェイントの動作を一緒にしなければ、引き面だとバレてしまうので注意しましょう。
また、フェイントにはいくつかの方法があります。
- 1つ目に、胴を一瞬当てる事で意識させて引き面を打つ方法。
- 2つ目に、胴の軌道で担ぐことにより、フェイントをして打つ方法。
- 3つ目に、拳で相手の左手を上に、カチあげる事で相手は自然と「胴に隙ができた。危ない。」と思い、腕を下げてくる瞬間に引き面を打つ方法。
他にも、引き面を一度フェイントしてから、引き胴を打つフェイントをして引き面を打つ方法などもありますが、こちらは上級編で説明します。
フェイントをしている時は、相手に隙を見せてしまうことにもなるので、中途半端にフェイントをしたり、相手が驚かない様なフェイントだと逆に打たれてしまいます。
なので、一番最初に説明した、フェイントを行わない普通の引き面もしっかり練習しておきましょう。

9.面フェイント裏から引き面
面フェイント裏から引き面は、初級編でも説明した裏から引き面をより詳しく説明していきます。
自分から見て、右側の面を少し触って、相手に警戒させて(避けさせて)から裏に引き面を打ちます。
その時に、手だけ打突しようとすると相手に裏面だとバレてしまうので、体のフェイントも使いましょう。
体を一瞬右側に動かす事で、相手はより一層普通の引き面を警戒して裏面を打突しやすくなります。
この時、体が右に行き過ぎたり、重心が右に行き過ぎると、左側に戻れないので1本になりにくくなります。
本当に一瞬だけ相手の意識を普通の引き面に持っていく様にしましょう。
10.裏から別れ際に、表に抜いて引き面
別れ際の引き面になりますが、裏からそのまま打つのではありません。
別れ際の裏から引き面を警戒している人に有効になります。
下がりながら打ってしまうと、一本になりにくいので打ってから下がる事を意識しましょう。
裏から表に竹刀を回して打つことになるので、スピードが遅ければ相手に避けられてしまいます。
回す時は、大きく回さずに最小限の軌道を通って表に持っていく様にしましょう。
以下の動画の21分28秒辺りから、槌田選手が裏から抜いて引き面を打っています。
出典:Youtube 九州学院 前人未到の三連覇 インターハイ剣道2015
引き面の打ち方・引き面の種類【上級編】
引き面の打ち方の上級編となりますが、フェイントの量が多くなるイメージを持ってください。
基本は1の技「ストレート」
応用で2の技「変化」「フェイント」
を使用しますが、強い選手になるとフェイントも読まれて、避けられてしまいます。
そこで、フェイントを2回使用しての引き技を打つこともあります。
フェイントのやり方や、「組み合わせ」は数多くあると思うので、簡単なものを説明していきます。
また、フェイントの量が多いので、そこを狙われない様に細心の注意をして技を出しましょう。
フェイントする部分を狙われていたら、ストレートの引き面で相引き面に持っていくなど、対応してみてください。
11.押して引き胴フェイント引き面
押して引き面を改良した技で、押すことで体勢が一瞬崩れて引き面を警戒します。
そこで、あえて引き胴のフェイントを入れることで相手は「引き面ではなくて、引き胴!?」と手元を下げる瞬間に引き面を狙います。
これも組み立て次第なので、押して引き面を打っておかないと、押した瞬間に手元が上がらないと思います。
自分が出した技と、相手の避け方を予測して、裏の裏をかいて技を選択してみてください。
https://anpanmankun.com/2019/06/19/kajitnai-hyoga-sinai-kendo/
12.崩して引き胴フェイント引き面
崩して引き面の改良版で、崩して引き面を打つことで、次回崩した時に手元が上がります。
そこで敢えて引き胴のフェイントをする事で、手元を下げるので引き面を狙う事ができます。
注意するのが、スピード任せに打ってしまうと、相手は何がどうなってるのかわからない状態になるので、しっかり崩した後、相手に引き胴だとわかりやすい様にフェイントしてください。
遅過ぎると体勢が戻ってしまうので、タイミングは練習してみてください。
相手が技を出してきたのに対して引き面
相手が、「面」「小手」「胴」「突き」にきた時に、間を開けて下がりなら打つ技です。
引き技は鍔迫り合いからの技が基本ですが、応じ技の中でも引き技は使われています。
応じ技になるので、相手が技を出してくる事を予測して、ギリギリで避けたり「間を開けたり」する事で、隙を見つけて打突します。
速く「間」を開け過ぎると、相手は打ち切ってこず、すぐに避けの体勢になるので、ギリギリまで引きつける事がポイントです。
以下の動画の35分25秒で1本にしてるので、スキップして確認してみてください。
引き技・引き面の打ち方 まとめ
今回は引き面の打ち方について詳しく紹介させていただきました。
言葉だけでは伝わりにくい部分も多いとは思いますが、基本的な打ち方等まとめてみたので是非参考にしてみてください。
特に上級編になりますが、技の組み合わせ次第では色々な技を開発することができます。
正直基本には乗っていない技ですが、相手の意識をずらすことにチャレンジしてみてください。
ポイントは、自己中心的にならずに、相手が今どんな技を警戒しているのかなどの「相手の心」を予測することでフェイントは有効になります。
意識して取り組んでみてください。
技を出すタイミングも、自分勝手になっては1本になりません。
相手が気を抜く瞬間や「間」を作り出せる様に練習をしましょう。
- 強く打突する
- 踏み込みを強くする
- 一瞬で下がる
- 相手の裏をかく
- フェイントとストレートを使い分ける
- 打ってから下がる
上記の大事なポイントを意識しながら練習してみてください。


